セニング(スキ鋏)は、スキ率(カット率)だけで選ぶと失敗しやすい道具です。
同じ25%のスキ率でも、ラインが出やすかったり、狙い通りの仕上がりにならなかったり…
実はこの違い、「どのような目的を想定して作られているか(設計)」の違いにあります。
セニングを上手に使いこなすコツは、スキ率だけでなく「用途」に合わせて選ぶこと。
この記事では、年間5,000丁のハサミを手掛けるキクイシザースが、セニングの基本を「毛量調整」と「質感調整」の2つに分けて解説します。
※補足:メーカーによっては「量感調整」という言葉を用いることもありますが、この記事では読者の方の混乱を避けるため、あえて「毛量調整」と「質感調整」の2つに絞って整理します。
もくじ
セニングのスキ率とは?失敗しないための基礎知識
まずは、「スキ率」についておさらいしましょう。 セニングのスキ率とは、「一度の開閉で、パネルの毛髪を何%切ることができるか」を表す指標です。
スキ率25%の場合: 100本の毛髪に1回ハサミを入れると、理論上は25本が切れる計算です。
ただし、これはあくまで理論値。 実際にはパネルの厚み・髪質・ハサミを入れる角度によって切れる量は変動します。 厳密な数字と考えすぎず、まずは「目安」として捉えるのが正解です。

★作り手からのアドバイス
最初の1丁や、メインで使うセニングを探しているなら、20~25%のスキ率を選んでおくと、幅広いスタイルに対応しやすく失敗がありません。
「毛量調整」と「質感調整」|目的別セニングの違い
スキ率が「切る量」なら、もう一つ大事なのが「どのように切るか」という視点です。
ここが曖昧だと、「狙った通りに量が減らない」「馴染ませたいのにラインが出すぎる」といったストレスに繋がります。
毛量調整(ボリュームコントロール)
毛量調整とは、髪の量そのものを減らして、重さや厚みを整えること。 ベースカットの段階でしっかり厚みを取りたいときには、スキ率が安定しており、均一に髪を落とせる設計のセニングが求められます。
キクイシザースでは、しっかり髪を捕まえて切れる「V溝」タイプのセニングを毛量調整としておすすめしています。

毛量調整セニング、スキ率25%。クシ刃の先端にある「V字の溝」に髪がしっかり収まるので、正確にコントロールできます。
▼こんなシーンにおすすめ
多毛なお客様のベース作りで、一気に重さを取りたい
メンズカットやショートボブの内部を整理したい
狙った箇所の厚みを正確にコントロールしたい
質感調整(テクスチャーコントロール)
質感調整とは、毛先のなじみや、髪のやわらかい動きを整えること。 パツンとしたラインを出さず、ナチュラルな軽さを出すには、「刃の幅が広く、髪を適度に逃がしながら切る」設計が適しています。
キクイシザースでは、「2スキ・3スキ」といった、抜けの良さとなじませを重視したモデルを質感調整としています。

質感調整セニング、スキ率25%。クシ刃先端がギザギザになった「2スキ」で、自然に毛髪を流しながら梳いていきます。
▼こんなシーンにおすすめ
- 毛先をやわらかくニュアンスを出したい
- ラインを壊しすぎず、自然になじませたい
- 仕上げの段階でなじませたい
毛量調整と質感調整、迷ったらどっち?セニング選びの優先順位
「どっちも大事だけど、どっちを選べばいいの?」と迷ったら、まずは自分の「メインの悩み」がどこにあるかを整理しましょう。
「とにかく仕事のスピードを上げたい、しっかり量を減らしたい」 → 迷わず【毛量調整タイプ】
「ラインを消すのが苦手、馴染ませに時間がかかる」 → 【質感調整タイプ】が救世主になります
同じスキ率でも、設計思想が違えば「別物」です。パーセントという数字の奥にある「設計」に目を向けるのが、道具選びのプロへの第一歩です。
まとめ
セニングは非常に奥が深く、スキ率だけで判断するのは難しい道具です。
今回は分かりやすさを優先して、「毛量調整」「質感調整」に分けて整理しました。
実際には、両方の性質を兼ね備えたバランス型のモデルもありますが、まずはこの「2つの軸」を知っておくだけで、道具選びの失敗は劇的に減ります。
「今使っているセニングの、ここが使いにくい」「こんなスタイルを作るときに、もっと楽をしたい」
そんな具体的なお悩みがあれば、ぜひ私たちにご相談ください。 製造現場の視点から、あなたに最適な一丁を一緒に見つけましょう。





