【工芸対談】華道の哲学と美意識 ~ 前・インタビュー編

6月16日、華道家 生駒瓢耀 さんとInstagramライブ配信で行った対談。
キクイシザース代表 菊井 が華道の美意識や哲学について伺った。

アトツギ・生駒瓢耀さんの経歴について

菊井:分野は違いますが、ハサミを作ってる菊井から、ハサミを使ってる生駒さんにいろいろと聞きたいと思うのですが、まずは経歴から・・・

生駒:生駒瓢耀と言いまして、奈良で住んでいます。
僕自身は4代目の華道家として、華道の伝承をしているのと同時に、フラワーアレンジも出来るので、そのふたつの違いも踏まえて、建築空間の中に華道も入れつつ西洋も入れつつ、新しい表現でいけ込むという活動をしています。

菊井:生駒さんで4代目という事ですが、生駒さんはどういう経緯で華道の道に進まれたんですか?

生駒:大学は建築学科だったので5~6年前までは建築関係の営業をしていました。そこから、家業があるのできちんと考えようという事で、父親に「継ぎたい」という話をしたんですが。熱い抱擁で迎えてくれると思ってたら、
「継いでも華道で食べていくのも大変だから、自分で好きなようにしてくれ」
と。あれ・・・思ってたんと違う、みたいな感じでしたね(笑)
ただ、継ぐことは決めてたので、まずは西洋の考えを学ぼうと考えて、神戸の花屋で4年半、フラワーアレンジやアパレルの装飾、ディスプレイを一気に詰め込んで、去年「華道家」として独立しました。

華道とフラワーアレンジのちがい

菊井:なんとなく華道=和、フラワーアレンジ=西洋というイメージはありますが、違いはどこにあるんでしょうか?

生駒:僕なりの解釈をざっくりとまとめてみました。

1.哲学と芸術

 いけ花というのは僕は哲学だと思っていて、フラワーアレンジは芸術=花を生ける技術という、前提のちがいがあります。

2.2次元と3次元

 飾る場所が床の間であるいけ花は、見る方向が一定で裏側から見ない。だから2次元的に考えるんです。フラワーアレンジではパーティのテーブルで真ん中にドンと置かれる。なので、どの角度からもきれいに見えるよう3次元的にいけます。

3.引き算と足し算

 いけ花は省略していくものなのに対し、フラワーアレンジは足していくといういけ方にも違いがあります。

4.線とマッス

 あとは、風土のちがいに依るんですけど、日本の花って桜や梅など、木があって枝があってその先に花が咲く、という線があるんですが、西洋はかたまりの花、茎はあるけど花がメインという咲き方が違うので、そういった花そのものに合わせた違いもあります。

5.花のいいなりと人のいいなり

 最初の哲学というはなしになるんですが、いけ花は主語が「花」。つまり、その花がどういう風にどの角度で花瓶にあれば自然か、を考えます。人は花の下僕。一方フラワーアレンジは芸術なので、主語である「人」が、何かを表現するために花を使います。

6.時間経過と最高の瞬間

 フラワーアレンジは、パーティのその一瞬に最高の状態を持ってきます。少しでも傷んだ花は除くし、その日に合わせて咲かせる、という事もします。ですがいけ花は、つぼみの状態から花が咲いて、散っていく。その時間の移ろいを美学として表現します。だからつぼみも使うし、散りかけのものや枯れかけのものも使います。

7.アシンメトリーとシンメトリー

 次の不完全と完全という事にもつながりますが、いけ花は非対称、フラワーアレンジは「どこから見ても」対称、という違いがあります。

8.不完全と完全

 いけ花はガチっと形が決まっていない、不完全さもひとつの美学として取り入れます。一方、フラワーアレンジはどこから見てもきれいで枯れてる花はないという完全な形というイメージです。

華道の哲学と美意識

菊井:時間の経過を表現する。だからこそ、その中で不完全さも出てくるし、非対称性も生まれる、というように、すべてつながる話だと感じました。比較すると華道は哲学的、という部分が分かった気がします。

生駒:そもそも華道とは何か、という事に誤解があると思っているのですが、花をいける「技術」ではないんです。

「美しい花を見ることから総ての美しいものへの情景となりやがては吾々の生活も美しく作り上げていく情念に通ずるもの」

これは創始者・生駒瓢香斎のことばなのですが、花を見るという事を通じて自分の人生を美しくしていく、心の持ち様を説くのが華道なんです。

菊井:だから「道」なんですね。華道の美意識とはどういうところにあるんでしょうか?

生駒:「間(ま)」ってあるじゃないですか。空間の余白というか、そういうのが華道だけでなく、日本文化の美意識には共通するものだと感じています。

 たとえばフラワーアレンジだと花瓶にバッとお花がいけてあるのがきれいだと考えるから、あまり空間がないんです。でも、いけ花は、この写真のように空間がたくさんある。

 僕が一番伝えたいのは、いけ花の花瓶の左側にある余白。この間なんかは、西洋的な感覚では埋めちゃうんですが、華道ではあえてこういった間も残します。すべて埋めてしまわず、間を開けることで、残った1本の良さが際立つ。ここに引き算の考えがあります。
 必要のない要素を省略していくことで、残ったものの美しさが引き立つ、という間の捉え方が華道の美意識です。華道というと地味に感じられることもあると思うんですが、飾る場所も大切で、床の間のある和風建築など、省略の文化の中で建造された空間なら合うのですが、西洋的な空間の中では調和しないという事もあります。

菊井:建物空間との調和というのは、建築出身の生駒さんらしい考え方ですよね。

後・対談編につづく

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