「お釈迦」と「なまくら」金属工芸に由来するふたつの言葉

物事がダメになる、使い物にならなくなる、という意味の言葉で、お釈迦になるというのがあります。

美容師さんのハサミなんかも、大切に使ってもらえたら何十年と長く使えるものなのですが、
悪い研ぎ方をされたり高いところや硬い床に落としたりすると、お釈迦になってしまう…
ということも、まれにあります。

鋳物職人から生まれた、お釈迦になるという言葉

先日、秋田の鋳物職人・武藤さん@muto_castからこんな話を伺いました。

お釈迦とは鋳造業から発生した語であり、役に立たない物や事をいう。
また、失敗の理由を「火が強かった。」などと職人はいう。
4月8日に聞こえる。この日はお釈迦様の誕生日だ。だからお釈迦になるなのだ。

武藤鋳物工芸さまHPより抜粋

なるほどー。
こういう洒落の利いたことばって、なんとなく職人っぽくていいですよね。
武藤さんとのお話を通じて、面白い知識がまた一つ増えました。

武藤鋳物工芸さんが造られた「ももさだカエル」

刃物屋さん由来の「なまくら」という言葉

そういえば。
だらけている様子のことを鈍と書いてなまくら、と言います。
これはもともとは焼(やき)の入っていない「ナマ」の刃のことで、切れ味が悪い刃物を言います。
そこから、人に対して「なまくら」というと怠けている様子や力のない様子を指しています。

焼が入った良い刃物であっても、加工熱が入ってなまくらにしてしまうと、お釈迦になってしまいます。
何のこっちゃ、って話になってきましたが笑

一度なまくらになった刃物は元には戻らないので、ハサミ作りでは熱が加わらないよう、手間暇かけて研ぐことがとても大切なんです。

お釈迦にしない、ものづくり

キクイシザースのハサミ作りは、すべてお客さまの注文を受けてから作っています。
手間はかかるのですが、注文いただいたものなので、1丁たりとも失敗は許されない。
これが製品在庫で置いておける物を作っていると、20丁作っている途中で1丁がお釈迦になっても、
とりあえず19丁仕上がればいいか、となるのですが。
私たちのものづくりはすべてお客さまをお待たせしている商品なので、お釈迦になってしまうと、もう一度最初からやり直し。
大変ですが、それだけ1丁1丁のハサミに集中しますし、不良は減ります。

そうやって作っているシザーなので、お客さまの手に渡ってからも出来るだけ長く愛用いただきたいなと、いつも思ってハサミ作りを続けています。

キクイシザースがお約束する
5つのこと

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